左利きのメランコリ
たぶん、自分は特別な力を持った人間かなんかだと思い込んでいたんだと思う。
私は左利きである。
私の家族は、私以外全員右利きで、親戚にも左利きはいないと言う。
幼い頃、プリキュアを見るのが好きだった私は「私にしかない特別なチカラでは」と密かに誇らしく思っていた。
実際友達にほとんど左利きはいなかったし、いちいち注視していたわけでもなかった。
親が左利き用のハサミをくれた時、自慢したくなるくらいだった。
左利きは生きづらいのか?
まあ、小学校に上がって交友関係が広がり、そんな夢は「意外と左利きって多いじゃん」の気づきと共に消えていったのだが。
よく右利きの人から言われることは「左利きなの?色々大変じゃない?」
である。
時には「ええ!かわいそうにねえ」とも言われる。おいおい。まあいいけど。
では、左利きである私が生きる上で困ったことはあったか?
答えは「別に困らない」である。
私の中で利き手というのは、「なんかこっちの方がやりやすいぞ」という身体の好みの定着だと思っている。
私が左利きでちょっと困ったのは以下の事例。
- ハサミ
- 包丁でする皮剥き(できない)
- 万年筆
あれ?結構困ってね??というのは言わないでほしい。
ハサミ
これは仕方ない。ハサミの刃の向き方は決まっている。
普通のハサミを左で使うと全く切れない。
じゃあどうすればいいか?左じゃうまく使えないなら右で使えばいいのである。
大学4年生にもなって「ハサミが左利き用じゃないから紙を切れません」は口が裂けても言えない。
そもそもペンとは違って、右で使っても求められるスキルは低い。
暴論だが、あくまで利き手は「身体の好み」なのでもう片方を使えばいい。手がふたつある理由。
包丁の皮剥き
これはできない。単純に怖くてできない。
家庭科の授業の時に、教えてくれた先生が右利きだったため「見てもわからない」。
左でやる想像がつかなくて、怖くてできず、そのまま大人になったのである。
家庭科のテストはどうやって通過したか記憶にない。
じゃあどうすればいいか。ピーラーを使おう。
りんごのウサギや梨はどうするか?そんなもの食わん。
梨は好きだから無理矢理皮を削ぎ落とす。
大抵の食材の皮はピーラーできれいに剥ける。できなくても困らない。
万年筆
知らない方も多いかもしれないが、万年筆にも右利き用と左利き用がある。
万年筆はペン先にインクを伝わせて描画する道具である。
ボールペンとは違い、直接ペン先を紙に擦り付けるので当然すり減る。
「万年使える」というその名の通り、使えば使うほど使いやすくなって馴染むというのは本当である。
万年筆は線の引く方向によってインクが出やすいのと出にくいものがある。
だからどう頑張っても右利き用の普通の万年筆はインクが出にくくて書けた物じゃないし、ハサミのように右で書くのはできないので、こればっかりはちょっと困っている。
まあでも他人の万年筆なんてそうそう使わないので、生きづらさは感じない。
その他
細かいことを言えば「スポーツ道具が少ない」「バッティングセンターで左打ちブースが少ない」「横書きの時に手が汚れる」などあるが、全部些細なことで左利きで困っているというほどでもない。
左利きは特別に保護されるべき「マイノリティ」か?
以下のサイトによると、日本での左利きの割合は約10%で、世界だと9%ほどだという。
遺伝によって左利きが誕生することがあるらしいが、私の家族親族に左利きはいない。
データからもあるように左利きは「マイノリティ」と言って良いだろう。
それでは、いわゆる「多様性の社会」のために特別保護されるマイノリティであろうか?
私は正直「それは言い過ぎ」だと思う。
とある番組の特集で、「多様性」のために左利きに住みやすい社会にしよう、という活動をしている方を見た。
その方は左利きで困っていることが多いらしいが、私は失礼ながらも疑問を感じてしまった。
「え、それ、右手でやればよくない?なんのための右手?」
その方によれば「改札機にて、切符入れやICカードタッチの端末が右側にあるのは左利きに優しくない」という。
それは左利きの私でもよくわからない。右手で持てばいいのでは…?
左利きの友達も言っていたが、そんなにも何でもかんでも左手を使うわけではないのだが。
この人が使いづらく感じてるからこその主張なのかもしれないけど「ちょっとそれは違うな」と思った。
社会活動の件は結構だが、価値観を押し付けられても困るだろなあ。
左利きだからこそ右手を使う
実は、左利きは、左利きだからこそ右手もよく使う
という人が多い。
簡単にまとめるとこういうことだ。
- 左手で物を持つから右手で操作・使用する
左利きは「つかむ・もつ」ことに左手を使うことが多いという。利き足が利き手と逆の人もいるし、現に私がそうである。
例えば、左手でバッグを持つから右手でボタンを押す。
左手にお箸があるから、右手でリモコンを操作する。
だから左利きの人は両利きに近い人も多い。
利き手が埋まってるから反対の手も使う、というのは右手の人も多いのではないか?
ただ、世の中にほとんどの道具は右利きのものなので、左利きは自然と両利きに順応する。
だから先ほどからうざいほど「右手でやればよくない?」と言っているのはこういうことなのだ。
左利きでよかったこと
左利きで困っていることを先ほど述べたが、今度は左利きでよかったことを話してみよう。
実を言うと「そんなにない」。笑
私にとって右利きも左利きも大して変わらないからである。
少し上げるなら次の通り。
- 両手が使える
- 話のネタになりやすい
- なんか褒められる
両手が使える
これも先ほど述べたことだが、左利きは右手もよく使うのでほぼ両利きの状態になる。
これが意外と便利で、日常生活の痒いところに手が届く感覚になる。笑
高校生の時はチョークを両手で使ったり、左手でメモをとり右手はテンキーで計算したりしたものだ。
話のネタになりやすい
まさにこのブログもそうなのだが、初対面で会う人と話が詰まった時にネタにしやすい。
相手が左利きなら左利きあるあるで盛り上がり、
右利きなら相手から色々質問されることが多いので助かっている。
なんか褒められる
「左利きは天才が多い」とよく言われるが、実はそうでもない。
よくクリエイティブな才能があるとも言われるが、わからない。
だが右利きの人からはよく「左利きって天才じゃん!!」とネタで褒められることがあったり、
特別扱いされることもあるので満更でもないのだ。これは個人的な感想ではある。
左利きは好みと体質
もちろん、左利きの存在は世の中でも珍しい物ではあるが、単なる好みと体質なので本当に特別な存在でもないし、過度に保護されるような人でもない。
ただ、私は今まで「周りは右利きなのに」とマイナスに思ったことは一度もなかった。
幼い頃から父親が「周りと違うってカッコいいじゃん、特別じゃん」とずっと教えてくれたおかげだと思っている。
だからこそ、今でも私が左利きであることはちょっとだけ誇らしい。